相原君は今日も笑顔で


 お母さんに頼まれた物は全部買うことができた。

 卵に牛乳、それから豚肉などのセール品をいくつかと翼に果物が入っているゼリーを二つ。

 前回熱を出してしまった翼に買ってわたしたら喜んでくれたから今日は多めに買っておく。

 レジに向かう前にお母さんから電話があって、落ち着いたから今日中に翼も一緒に帰られそうだと電話があったから安心して胸がホッとしている。

 豚肉は少し多めに買えたし、今朝家の冷蔵庫にはじゃがいも、にんじん玉ねぎ、カレールーもあったから今日はカレーライスにして翼には卵が入ったおかゆにしようと夕ご飯のメニューを決める。

 店員さんの店内に響く声を聞きながら家に帰ろうとドアに向かえば見慣れた黒い学生服の人が前のほうにいて目に入った。

 相手は私が近づくと振り返り、私の姿を見上げると目を丸くした。

「三崎!」

「相原君?」

「偶然だな。三崎もおつかいか?」

「うん。もう買い終わったけど……」

 私が買い物袋を持ち上げて相原君に見せるようにすると相原君も同じようにスーパーの袋を持ち上げた。

「それじゃあ一緒に帰ろうぜ」

 え……っ。

 前に生徒玄関で誘われた時みたいに相原君が笑顔で私を見る。

 どうしようかと戸惑っていると相原君は私の買い物袋をすっと持ち、「早く行こう」と早歩きで自動ドアを通って行く。

 相原君が荷物を持っている以上別々に帰るわけにもいかず、私は慌てて後を追いかけた。