後日返された国語の小テストは満点とはいかなかったけれど、嬉しいことにクラスで一番高かった点数の一人になれた。

 つい最近新年度が始まったと思ったらあっという間に中間テスト一週間前。

 いつもは部活でいない生徒が掃除の後も教室に残っていていつもより賑やかな気がする。

 テストが近いから今日は香奈恵ちゃんと一緒に勉強しようと約束をしていた。

 帰る準備をすませて教室のドアの近くにいた香奈恵ちゃんと視線を合わせて鞄を持った――ちょうどその時、鞄に入れているスマホが着信を知らせて鳴り響く。

 学校にいる時間帯に電話が鳴るのは家族からの緊急時がほとんどだから心配になる。

 慌てて鞄を開けてすぐに通話を始めると、機械ごしに聞こえたのは急いでいる様子のお母さんの声だった。

「もしもし?」

『あっ、葵? 悪いけど今日買い物と夕飯の支度をお願いできる?』

「今日は香奈恵ちゃんの家にお邪魔して少し勉強しようと思ってたんだけど……」

『翼が熱を出しちゃって今病院で診察してもらってるのよ。帰りが遅くなったら困るから出来れば夕飯を葵にお願いしたいんだけど――』

「――分かった。メニューは何でもいいんだね? 買い物の内容はメールで送っておいてね。うん、それじゃあ……」

 通話を終わらせた私はスマホを持ったままで香奈恵ちゃんの所まで歩いていく。

 香奈恵ちゃんは電話の内容を察してくれたようで「勉強会はまた今度にしよう」と言ってくれた。

「香奈恵ちゃんごめんね」

「気にしないで! 翼くんが早く元気になるといいね」

 「それじゃあ急いで帰らなくちゃ」と促してくれるように歩き始めてドアを開けた香奈恵ちゃんに私は「ありがとう」と小さく返した。