国語の授業が始まってすぐに小テストがあるのかと思っていた。

 香奈恵ちゃんや相原君、他の生徒も授業前の休み時間に教科書やノートを見てテストに備えていたけれど、南谷先生はチャイムが鳴るといつものように授業を始める。

 一番前の席の真ん中、教卓の前に座っている生徒が先生に「小テストはしないんですか?」と聞くと先生は珍しくにこりと笑って口を開いた。

「小テストは授業の後半に行います。授業態度に反映させたくなければくれぐれも授業中にテスト勉強をしないように」

 ところどころから「ダメだ……」、「終わった……」と力ない声が聞こえても先生が言い直すことはなく、口元は笑っているのに目はキラリと私達生徒をジッと見ているようで。

 思わず私も背筋がピンと伸びたような気がしてシャープペンシルを握りなおした。


***


 小テストは漢字の読み書き各二十五問ずつという内容で、驚いたのは今日の授業で見た漢字も問題に含まれていたこと。

 中には音読みと訓読みの違いで同じ漢字が答えになる問題もあって、一通り解答欄をうめたけどちょっと自信がない。

 授業終了のチャイムに合わせて解答用紙は後ろから前の席の人へと手渡しで順番に先生のところに集められる。

 全ての解答用紙を一つの束にまとめた先生は「答案は次の授業で返します」と淡々と伝えて授業終了を告げて教室を去って行った。

 満点は無理でも高得点だったらいいなと思いながら、私は疲れた様子で机に伏せている香奈恵ちゃんと相原君を順番に見る。

 二人とも短い時間の中でだけど勉強をしていたから、二人が納得のいく点数をとれていたらいいなと願った。