相原君の様子からすると、どうやら小テストに向けて勉強するのを忘れていたみたい。
「まあ国語は二時間目だから少しくらいは勉強しとけよ?」
「お互い頑張ろーぜ」と相原君の肩を叩いて彼は相原君のそばを離れていく。
相原君は慌てたように鞄から国語の教科書をとり出してページをめくっていくと「うわっ、自分でメモしてあるし」と口にした。
と思ったらまだ立ったままだった私の方を勢いよく向いた。
「なあ三崎! この小テストって点数低かったら何かあるって言ってた?」
「再テストとか課題があるとか」と続ける相原君に南谷先生の言葉を思い出す。
「……確かそういうのはないけど成績に多少響くって言ってたと思うよ……?」
私が思い出しながらそう言うと相原君は「教えてくれてありがとな」と返して教科書に顔を戻した。
相原君って忘れんぼなのかな?
そう感じて心配になったけど、集中し始めた様子の相原君に声をかけるわけにはいかなかったので私はそれ以上何も言わずに静かに席に着いた。
――この後登校してきた香奈恵ちゃんに小テストのことを話したら香奈恵ちゃんも忘れていたみたいで、相原君のように慌てて教科書をとり出して佐藤先生が来るまで睨めっこをしていた。

