彼は相原君の頭に手を置いて髪の毛をクシャクシャにするように強くなでる。

「おい真琴ー。朝から女子と話してるなんて余裕だな」

「余裕ってなんだよ! 話しちゃ悪いのか?」

 「つーか頭なでんな」と相原君は手をつかんで引き剥がす。

 相手は気にした様子もなく「なでやすくてつい」と笑う。

 私と話している時と少し違う言葉遣いに相原君と彼は仲がいいんだろうなと思った。

「話は戻すけど、もしかして休み明けで忘れてんのか?」

「だから余裕とか忘れるとか何の話なんだよ」

 相原君は分からないといった様子で彼を見上げるとクラスメイトは「テストだよ、テ・ス・ト!」と言葉を強調した。

「は……?」

「その顔じゃ忘れてんな。今日の二時間目、漢字の小テストをやるって金曜日に南谷先生が言ってただろ。三崎さんも知ってるよな?」

「えっ、あ、うん。覚えてるよ」

 確かに先週金曜日の国語の授業で南谷先生が言っていた。

 今月下旬に中間テストを控えているから軽く漢字の読み書きの小テストをするって言って、みんなが「えー!」と声をあげていたことは記憶に新しい。

「マジかよ……」

 ポツリと呟くように言葉をもらした相原君の顔色が心なしか悪くなっているように見える。