「三崎?」

 椅子に手をかけたまま固まっていると相原君が眉を下げて困ったような表情で見上げてくる。

 笑った顔はキラキラしていて印象的だけど、眉を下げた困ったような表情で見られるとどうしていいか分からない。

「女子は可愛い物が好きかと思ったんだけど、もしかしてああいうの嫌いだった?」

「えっ、嫌いっていうわけじゃないよ……っ」

 じっと見てくる相原君にたえられずに飛び出したのは私の本当の気持ちでも嘘の気持ちでもない中途半端な言葉で。

 まわりにいるクラスメイトに聞かれていたらまた似合わないって言われるかもしれない。

 相原君だって気を遣ってくれているだけかもしれない。

 モヤモヤした気持ちが胸の中で大きくなって言葉が続けられない。

 鞄を持っていた右手にギュッと強く力をこめてどうしようと思っていると「ならよかった!」と相原君がまた笑った。

「俺が勝手に送ったから嫌だったらどうしようかと思った」

「相原君……」

 まわりのクラスメイトはみんなそれぞれ話をしていて誰も最後列にいる私達のほうを見ていない。

 そのことにホッとしながらも相原君に目をゆるく細めた笑顔で見られていることを意識すると顔が熱くなる。

 さっきまでのキラキラしたものじゃなくて、何だか優しそうな笑顔で顔が熱くなるのと一緒に胸がムズムズして私は思わず目をそらした。

 ちょうどその時相原君の名前を呼ぶ声が聞こえて顔を向けると一人の男子が相原君に近づいてくる。