ラグタイム

「バカ!

人に包丁を向けるな!」

武人は1歩後ろに下がった。

「ああ、ごめん…」

謝ったあたしに、
「謝るヒマがあるなら包丁をまな板のうえに置け。

俺を殺す気か」

武人が言ったので、あたしは彼の言う通りに従って包丁をまな板のうえに置いた。

「料理をする以前に、包丁の扱い方を覚える方がずっと先だったか…」

武人は頭が痛いと言うように指でこめかみを押さえた。

「ごめん、初めてだったからつい嬉しくて…。

もう2度と人に包丁を向けないから、な?」

あわせた両手を前に出したあたしに、
「当たり前だ」

武人はやれやれと言うように息を吐いた。

はしゃいでしまったあたしもあたしで悪いけど、何もそこまで呆れることなんてないじゃないか。