ラグタイム

「話の内容は聞こえなかったし、姿も見えなかったから性別はわからなかった。

閉店したはずなのに、一体誰と話をしているんだろうなって思った。

相手と揉めているようだったら仲裁に入ってやろうと思ったけど、特にそう言った様子もなかった。

明日出勤した時に聞けばいいかと思って、その時は帰ったんだ」

「そうなんですか…」

兄貴のヤツ、一体誰と何の話をしていたんだろう?

「それで、兄貴は…」

そう聞いたあたしに、
「気のせいじゃないかって言われた」

赤川さんが答えた。

「えっ…き、気のせい?」

聞き返したあたしに、
「ああ、気のせいだって。

俺が疲れてるんじゃないかって言われた」

赤川さんは息を吐いた。