「お前なあ、結構デリケートな話をしてるんだぞ?

少しくらい声のボリュームを下げようと思わねーのかよ」

藤本さんが人差し指で片方の耳をふさぎながら、あたしに毒づいた。

「あっ、すみません…」

あたしは呟くような声で謝った。


詳しい話を聞くために藤本さんと黒崎さんを部屋にあげると、テーブルのうえに麦茶が入ったグラスを置いた。

「あの、早速ですけど…」

話を切り出したあたしに、
「ああ、朝貴が失踪をしたって言う話だな」

藤本さんが言った。

「兄貴が失踪をしたって、どう言うことなんですか?」

そう聞いたあたしに、
「ご存知なかったんですか?」

黒崎さんが驚いたと言うように聞き返した。