「ありがとうございます!」

兄貴は藤本さんに頭を下げた。

「もう2度とこんなことをするんじゃねーぞ」

ポンと、藤本さんが兄貴の頭に手を置いた。

「はい」

兄貴は首を縦に振ってうなずいた後、笑顔を見せた。

こっちも和解できてよかった…と、あたしはホッと胸をなで下ろした。

昨日はどうなるかと眠れないくらいに心配したけど、藤本さんは兄貴をクビにしなかった。

心の底から、彼は兄貴のことを大切にしているのだと改めて思い知らされた。

「夕貴さん」

あたしの名前を呼んだその声に視線を向けると、翼だった。

彼の隣に武人が並んだ。

そうだ、あたしの問題があったんだ。

こうして兄貴が帰ってきたから、あたしは彼らに性別を偽って働いていたことを話さないといけない。

あたしたちの間に流れた不穏な空気を感じながら、あたしはそう思った。