その中の写真を指でタップすると、画面に広がった。

「懐かしいな…」

その写真を見た俺は、呟いた。

学生気分がまだ抜け切っていない朝貴とまだ20代だった俺が一緒に写っているこの写真は、『ラグタイム』開店当日に記念撮影をしたものだ。

親父の紹介で知りあった黒崎さんと朝貴と俺の3人でのスタートだったな。

夜遅くまで『ラグタイム』に並べるメニューを出しあったこと、時には取っ組みあいのケンカをしたことを思い出して、俺は小さく笑った。

店の名前を『ラグタイム』にしたのは、朝貴の提案だった。

初めて聞いた言葉に首を傾げた俺に、朝貴は19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカの中心で大流行をした軽音楽だと説明してくれた。

――来店してくれたお客さんが元気になってくれるような、そう言うお店にしたんです

生き生きとした笑顔を浮かべた朝貴に俺は首を縦に振ってうなずいて、店の名前を『ラグタイム』にしたのだった。