ラグタイム

正式に藤本さんの口から明かされた兄貴の失踪の真相に、ただ驚くしかなかった。

ロビーに流れ出した沈黙に、誰も言葉を発しようとしない。

ただ時間が過ぎて行くのを感じることしかできなかった。

「――知っていました」

そう言って沈黙を破ったのは、
「――武人…」

武人だった。

「ずっと前にたまたま早く出勤をしたことがあって、その時に大輔さんと黒崎さんとたぶん、大輔さんが言っていた探偵の人なのかも知れないですけどその人の会話を耳にしてしまったんです。

それで、朝貴が客の女に手を出して駆け落ちをした…と」

それ、あたしが話していたこと。

そう思って武人に視線を向けると、目があった。

――黙ってろ

武人の目がそう言ったように感じて、あたしはそっと目をそらした。