そう言った藤本さんに、あたしは何も言い返すことができなかった。

何故だか流れ出した沈黙に、言葉を発することができなかった。

先に沈黙を破ったのは、
「おい、何で黙るんだよ」

藤本さんだった。

「えっ…あ、アハハ…」

あたしは声を出して笑ってごまかした。

「もう気分もよくなったし、車に戻るぞ」

そう言ってベンチから腰をあげた藤本さんに、
「そうですか」

返事をした後、あたしも腰をあげた。

降り注いでいる真夏の太陽に、藤本さんの髪がキラキラと光っている。

ああ、結構キレイな髪なんだな。

心の中で呟いた後、あたしは藤本さんと一緒に歩いて車の方へと向かった。