ラグタイム

「すっげーな…」

ズラッと飾られている浮世絵に、藤本さんは絶句していた。

『忠臣蔵』でおなじみの吉良上野介(キラコウズケノスケ)、“鼠小僧(ネズミコゾウ)”と呼ばれた大盗賊の次郎吉(ジロウキチ)、同じく大盗賊の石川五右衛門(イシカワゴエモン)などと、実在した悪人から物語に登場する悪人までと勢ぞろいである。

その中でも1番の見どころは、鶴屋南北(ツルヤナンボク)の代表作『東海道四谷怪談』だろう。

「うっわー…」

お岩さんの顔がグロテスクに描かれている浮世絵に、藤本さんは呆然としていた。

「夢に出てきそうだな…」

藤本さんは手を額に当てた。

「大丈夫ですか?」

そう聞いたあたしに、
「お前は平気なのかよ…」

藤本さんが呆れたと言うように呟いた。

「俺はお岩さんが今夜夢に出てくるんじゃないかと思うと、眠れないわ…」

これ以上は見ていられないと言うように、藤本さんは浮世絵から目をそらした。