ラグタイム

「じゃ、そろそろここを出るか」

そう言って椅子から立ちあがった藤本さんに、
「はい」

あたしは首を縦に振ってうなずいた後、椅子から立ちあがった。

ショルダーバックから財布を出したあたしに、
「ここは俺が払わせてくれ」

藤本さんがさえぎった。

「えっ、でも…」

「休みを奪ったせめてもの償いだ。

それにこう言う場合は、男としての顔を立てた方がマナーだ」

「…あ、ありがとうございます」

頭を下げてお礼を言ったあたしに藤本さんは満足そうに笑った後、会計を済ませた。

マナーだとは言うけど、何だか悪いな。

せめて自分の分だけでも藤本さんに返さないと。