ラグタイム

その兄貴が駆け落ちをして自分の前から去った時、相当なまでのショックが藤本さんを襲ったことだろう。

「ああ、悪ィな。

こんな話をしちまって」

藤本さんが笑いながら言った。

「いえ、兄貴と藤本さんの貴重な話が聞けてよかったなって思います」

あたしは首を縦に振って答えた。

「そうか。

じゃ、行くぞ」

藤本さんがカフェに向かって歩き出したので、あたしも一緒に歩き出した。

「いらっしゃいませー…あら、大輔くん」

店内に入ったあたしたちを迎えたのは、茶色の髪を1つに束ねたキレイな女の人だった。

「お久しぶりです」

藤本さんが彼女に会釈をした。