「じゃ、本当に帰るぞ。

家まで送ってやる」

藤本さんは歩き出した。

「ああ、待ってくださいな」

パンプスを履きなれていないと言うこともあり、思うように歩くことができない。

「ったく、仕方ねーな」

藤本さんは手を差し出した。

あたしはその手に、自分の手を重ねた。

「ほら、行くぞ」

「はい…」

あたしが足を前に出したのと同時に、藤本さんが歩き出した。

もしかして、あたしの歩調にあわせてくれてる…?

…まさかね。

心の中で呟きながら、あたしは藤本さんと一緒にホテルを後にした。