ああ、もうこれで武人と別れないといけないんだな。

明日には会えることはわかっているけど、この瞬間がとても名残惜しいと思った。

あたしが自宅を告げなければ、もう少しだけ武人と一緒にいられることができるのに。

だけどそうなってしまったら、武人が迷惑がるのが目に見えている。

「ああ、えーっと…」

あたしは武人に自宅を告げた。

明日になったらまた『ラグタイム』で顔をあわせることになるのに、もう少しだけ武人と一緒にいたい。

そう願ったあたしの気持ちを無視するように、車が発車した。

武人の女性不信をあたしが治すことができるなら、彼の役に立ちたい。

それも男としてではなく、女として。

窓から移り変わり行く景色を見ながら、あたしは心の中で願ったのだった。