一歩王宮の敷地内からでれば、街はお祭り騒ぎ。



至るところで祝いの酒が振る舞われた。



それもそのはず。



今日の朝刊で、大々的にセレシェイラとアネルマの結婚、そして、セレシェイラの国王襲名が発表されたからである。



現国王であるシルベスターが正式に国王となって、まだ一年もたっていない。



早すぎる王位の継承に、国民は戸惑うどころか喜び躍る。



誰一人、不信感を顕にしたり、まして反対する者など存在しなかった。



つい最近まで自分たちが、新しい王となるその男の事を《偽りの王》と忌み、蔑んできた記憶など欠片もない。



人々は、どういう訳か、セレシェイラを神に愛された幸せをもたらす《真の王》としてしか認識できていなかった。



知らぬ間に塗り替えられた記憶。



それが誰の仕業かも分からぬまま、人々は、力を持たないのマリオネットになる他なかった。