「あれリュカ、帽子は?」



 広場から離れていく最中、ルミアがリュカの変化にようやく気付く。



「...ああ、ガキにやった」


「そうなの?ふーん」



 さして興味のなさそうに返事をするルミア。



 しかしリュカは何となく申し訳なさそうで、



「...悪かったな、せっかくお前からもらったのに」



 顔を伏せながらそう言った。



 少し不安そうな、ルミアの顔を伺うような仕草にルミアは驚く。



「何そんなこと考えてたの。それは全く気にしてないけど、あげるなら新しいのが良かったんじゃない?あれ結構前から使ってるでしょう、今からでも遅くないんじゃ...」



 そんなことをぶつぶつと呟きながら悶々と考え込んでいると、隣でくすっと笑う声がした。



「ちょっとイーリス、こっちが真剣に考えているのに何で笑うの」


「あははッごめんごめん、いやあ、ルミには分かんないよ。こう、男の友情みたいなこと」


「...何それ」


「ま、とりあえずルミは気にしなくていい話だよ」



 不満そうに頬を膨らませるルミアを置いてイーリスは先へと進む。





「......またのけ者かっ」


「あははっほら置いてくよ!ルミッ、リュカッ」


「待てーー!!」


「......暗いから走るとコケるよ、ルミア」


「コケないわよ!!馬鹿にしないで!」


「......ハハッ」




すっかり暗くなった街道を、三人の騎士は走る走る



欠け始めた月は淡く輝きその姿を照らし、



三本の影を細く伸ばす



三騎士の長い夜は、まだ、続く───