───────



 次の日。



 ルミアたち一行は宿を出て西へと向かう。



『水の王国“アイルドール”を目指そうかと思っている』



 ジンノは昨晩そう言った。



 アイルドール王国と言えばどの国にも加担しない中立国として有名だ。



 ジンノはどうやらその王国で人を探しに行くらしい。



 だが教えてくれたのはそれだけで詳細は結局分からずじまい。



 かたくなに口を開こうとしない兄にルミアはむくれていた。



「ルミまだジンノの事怒ってるのか?」



「...別に。兄さんが頑固なの知ってるし、信用もしてるし。でもまたのけ者にされてる感じがする...」



 不満たらたらのルミアの頭をポンポンっと撫でながらイーリスが穏やかな笑みを向ける。



「のけ者になんてしてないよ、俺達も何も聞かされてないしね」



「うん...」



 戦うときの頼もしい姿と違う、納得がいかずに口をとがらせる幼く可愛らしい姿にイーリスは頬を緩める。



 アイルドールまでの道のりは遠い。



 グロルの手下にまたいつ狙われるか分からないため大きな荷物はノアに任せ。より動きやすい黒の隊服にマントを羽織り四人は歩く。



「ルミア」


「...」


「ルミアっ」


「...」


「こっち向けルミアっ」


「...(つーん)」



 計画を話してくれないジンノに、無視という密かな抵抗を試みながらルミアら一行はアイルドールに向けて歩みを進めていった。