「アポロってあんな奴だったか? ちょっと見ないうちに変わったなあ」



 ラウルに関しては若干引いているようにも見える。



「まあ...そうですね、いつもよりちょっと異常かもしれないけど、あれがアポロですよ
 彼はあれで、結構寂しがり屋だから」



「ふーん...」



 ネロとアポロ。



彼らは特殊部隊のなかでも一番付き合いが長い。



だからこそ分かるのだろう。



 感心するラウルに、ネロは言う。



「まあ、ミア嬢もあんな感じだからあの話は今は出来そうじゃないですね
後でアイゼン隊長に聞くといい。面白おかしく話してくれますよ」



「隊長も知ってんだ?」



「はい。先代の特殊部隊員はみーんな知ってます。何せ“伝説”と言われるくらいですから」



特殊部隊隊長のアイゼンは一番の古株。



ジンノが自ら編成した今の特殊部隊に変わる前から、先代の特殊部隊の一員として多くの戦場を経験している。



当時、まだ特殊部隊の候補生でしかなかったアポロとネロが知っているのだ。アイゼンが知らないなずがない。



ただいまアイゼンは部屋にこもっている。



......酒の飲みすぎで。



「あの人、アル中で酒禁止されてたのにまた飲んで倒れたんだろ?ったく、どうしようもねえな」



あとで、見舞いついでにその“伝説”とやらを聞いてくっかな。



ラウルはそう言って笑った。



少し離れたところではまたジンノが、ルミアに抱きついていたアポロを捕まえ二人していがみ合っている。



疲労感たっぷりのため息をつくルミアに、イーリスが近づいた。



「ルミ、もう直ぐ入隊試験だろ?
練習相手いないなら、俺でよければやろうか?」



ネロがダウンしてしまった今、願ってもみない申し出にルミアはぱっと顔を上げる。



「いいの!?」



「もちろん」



にこりと微笑むイーリスを見、ルミアにふと心配がよぎる。



「あ、でも、任務から帰ったばかりで疲れてるんじゃ......」



「そんなことルミが心配する必要ない
体力だけには自信がある」



「そーそー、伊達に特殊部隊の騎士やってないし。それにイーリスがばてたら次は俺が相手してあげるよー」



 力強いイーリスの声と元気なラウルの声が、ルミアの心配を簡単に一蹴してしまう。



 彼らの優しさにルミアはフッと微笑んだ。







 こうして幸せな日々が、静かにそして穏やかに過ぎていった。