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シェイラの執務室を出て、王宮の長い廊下を歩く。
オーリングは溜息をつきながら、これからどうするかを悶々と考えていた。
なんと言われようとシェイラの事はこれからも支えていきたいと思っている。
だが、ルミアのことが心配な気持ちもある。
ジンノも一緒だからまだ安心だが、自分をついて行きたいと思ってしまうのだ。
(はああーーーどうしたもんかなぁ......ん?)
悩んでいると、何処からか聞きなれた声が聞こえてきた。
声の出どころを探っていると、それは近くの回廊から聞こえていることがわかった。
そして、その声の主も。
(ジンノさん......と、グロル氏か?)
今日はルミアと一緒に居るはずのジンノと、フィンステルニス家の当主グロルだった。
オーリングのいる場所は二人が話している場所から死角になっている様で、全くこちらに気づく気配はない。
それにしても、おかしな組み合わせだ。
二人が話していることろなんて今まで見たことなかったのに。よりにもよって、国外追放の発端になった人物と国外追放される本人が話しているなんて。
オーリングは悪いと思いながらも、二人の会話に耳を澄ましていた。
「......気の毒でしたな、あんなにもあっさりと国外追放が決定してしまうとは。貴方はこの国の英雄だというのに。国民たちが悲しみます」
「はっ、どの口が言ってんだ。計画通りになって、お前は満足なんだろ?よかったじゃねえか」
ドキドキとしながら、二人の会話を聞く。
回廊は響くのか案外良く聞こえていた。
(にしても、ジンノさん、やっぱかっけぇな......)
王族の人間を目の前にしても、引けを取るどころかいつもの調子で威圧的な態度を取る。
しかし、次にグロルが放った一言にオーリングは目を見張った。
「いやぁ、私も不本意なんですよ、貴方のような優秀な人材を捨てるということは。どうです、私の元に来ませんか?悪いようにはしません。ただ、言う通りに従ってくれれば」
まさかの勧誘。
盗み聞いているだけのオーリングの額に、変な汗が伝う。
反応しないジンノに、グロルは負けじと続ける。
「前々から、貴方には目をつけていたんです。力の持ち腐れとはこのこと。勿体無いですよ
私の元へ来れば、貴方の力を誰よりも上手く使いこなせるというのに。貴方も暴れ足りないでしょう?悪い話じゃないと思いますが」
「..................」
ジンノは何も答えない。
あいにく、オーリングの位置からジンノの表情が見えない為、不安だけが募っていく。
(ジンノさん、なんで即答しないんだよっ
まさか......迷ってる?グロルの提案に迷ってるのか!?)
それだけはやめてくれと、心の中でこれでもかと念じる。
グロルのフィンス家は王族の分家の一角を担う一族でありながら、悪い噂が絶えたことはない。
前回、ルミアやジンノ達のおかげで未然に防がれたシェイラ暗殺事件も、フィンス家の優秀な第一補佐官が主犯だった。
自らの意思で単独で行った、グロルは関係ない、の一点張りだが、グロルが関係していない筈がないのだ。
ハラハラとするオーリングとは裏腹に、ジンノは明るい声で答えた。
その内容に、オーリングはサッと青ざめる。
無理もない。
「ああ。悪くない、いい話だ」
グロルの提案にこの上なく乗り気だったのだから。


