櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ






 ようやくその黄金の瞳を、オーリングに向けたシェイラ。



 二人は無言のまま見つめ合う。



 何を言うわけでもない。



 ただ無表情でオーリングを見つめるのだ。



 ひるみそうになる自分を諫めて、ここはひくものかとその瞳を逸らすことなく見つめ返す。



 するとシェイラがようやく口を開いた。



しかしそれはオーリングが、望んだ答えとは違って。



「...勘違いしているようだから言うけど、俺とルミはただの友だ。それ以上でも以下でもない。君が思っているような関係じゃないよ」



 その返答にオーリングはむっとする。



「そんなこと、ただの虚勢にしか聞こえません!傍から見てても十分わかります!
 貴方はルミちゃんのことっ...」



「オーリング」



「っ!!」



 勢いのまま言おうとしていた台詞を、シェイラが遮る。



 悔しそうに顔を歪ませるオーリングに、シェイラは言葉を続けた。



「もう一度言う。ルミアは俺の唯一の友、それだけだ。他には何もありはしない」



それに



「自分に正直になれとお前は言ったが、正直になるべきなのは俺じゃなくお前のほうじゃないのか?」



その言葉にオーリングは目を丸くする。



「......どう言う意味ですか」



「ルミに好意を抱いているのはお前じゃないのか、と言う意味だ」



オーリングは一層、目を見開く。



背中に冷や汗が伝う。



きっと、それは図星だったから。



バレないようにしていた



そうしていたつもりだった。



特に、この人の前では。



他の誰でもない、シェイラとルミアが結ばれるべきだと思ったから。







オーリングは、ルミアが記憶を失った状態でこの世界にやってきた時、彼女を初めに見つけてこの国へと導いた張本人。



おそらく、初めて会ったその時から彼女に惹かれていた。



美しく淑やかで、けれど強い、彼女に。



身を呈して誰かを守ろうとする、ムチャばかりして心配かける、ルミアに。



共に時間を過ごす中で、今までに抱いたことのないような感情を彼女に抱くようになった。



必死に気づかないようにした。



けれど、だめだった。



彼女を見る度に、自然と陽だまりに包まれたように心が温かくなる。



彼女が誰かを庇って怪我をする度に、血の気が引いてひどい絶望感を何度も味わう。



ほかの誰にもそんな感情、感じたことはなかったのに。



ようやく、その感情を、気持ちを受け入れようとしていたときだった。



彼女はシェイラと出会った。



死を選ぼうとしていた、オーリングの大恩人であるシェイラ。



自分にはどうすることも出来なかったのに、彼女に触れ合う度に瞳に力が宿っていく。



ルミアも、自分には見せないようなとろけるような笑みをシェイラに向ける。



互いに必要とし合う二人を見て、オーリングは自身の気持ちに蓋をしたのだ。



それが『恋』だと気付く前に。



もう手遅れだと知りながら。