ようやくその黄金の瞳を、オーリングに向けたシェイラ。
二人は無言のまま見つめ合う。
何を言うわけでもない。
ただ無表情でオーリングを見つめるのだ。
ひるみそうになる自分を諫めて、ここはひくものかとその瞳を逸らすことなく見つめ返す。
するとシェイラがようやく口を開いた。
しかしそれはオーリングが、望んだ答えとは違って。
「...勘違いしているようだから言うけど、俺とルミはただの友だ。それ以上でも以下でもない。君が思っているような関係じゃないよ」
その返答にオーリングはむっとする。
「そんなこと、ただの虚勢にしか聞こえません!傍から見てても十分わかります!
貴方はルミちゃんのことっ...」
「オーリング」
「っ!!」
勢いのまま言おうとしていた台詞を、シェイラが遮る。
悔しそうに顔を歪ませるオーリングに、シェイラは言葉を続けた。
「もう一度言う。ルミアは俺の唯一の友、それだけだ。他には何もありはしない」
それに
「自分に正直になれとお前は言ったが、正直になるべきなのは俺じゃなくお前のほうじゃないのか?」
その言葉にオーリングは目を丸くする。
「......どう言う意味ですか」
「ルミに好意を抱いているのはお前じゃないのか、と言う意味だ」
オーリングは一層、目を見開く。
背中に冷や汗が伝う。
きっと、それは図星だったから。
バレないようにしていた
そうしていたつもりだった。
特に、この人の前では。
他の誰でもない、シェイラとルミアが結ばれるべきだと思ったから。
オーリングは、ルミアが記憶を失った状態でこの世界にやってきた時、彼女を初めに見つけてこの国へと導いた張本人。
おそらく、初めて会ったその時から彼女に惹かれていた。
美しく淑やかで、けれど強い、彼女に。
身を呈して誰かを守ろうとする、ムチャばかりして心配かける、ルミアに。
共に時間を過ごす中で、今までに抱いたことのないような感情を彼女に抱くようになった。
必死に気づかないようにした。
けれど、だめだった。
彼女を見る度に、自然と陽だまりに包まれたように心が温かくなる。
彼女が誰かを庇って怪我をする度に、血の気が引いてひどい絶望感を何度も味わう。
ほかの誰にもそんな感情、感じたことはなかったのに。
ようやく、その感情を、気持ちを受け入れようとしていたときだった。
彼女はシェイラと出会った。
死を選ぼうとしていた、オーリングの大恩人であるシェイラ。
自分にはどうすることも出来なかったのに、彼女に触れ合う度に瞳に力が宿っていく。
ルミアも、自分には見せないようなとろけるような笑みをシェイラに向ける。
互いに必要とし合う二人を見て、オーリングは自身の気持ちに蓋をしたのだ。
それが『恋』だと気付く前に。
もう手遅れだと知りながら。


