「いつどこで居なくなったのかは今もわかっていないが、死んだ訳じゃない。行方不明と言った方が正しいだろう」
当主のいない一族ほど不安定なものはない。
外部からの圧力で簡単に潰されてしまうからだ。
名のある貴族であれば、すぐに何かしらの措置が取られるが普段から平民として生きているプリーストンは何もしなくてもさして問題はなかった。
「ジンノが当主になってさえいれば、今回のようなふざけた事は起きなかっただろうが、あいつはプリーストンを継ぐことはおろか、親の搜索さえしなかった」
その全てを頑なに拒み続けたジンノ。
その裏にある、ルミアを虐め続けた両親に対する深い怒り恨み憎しみと、無責任に姿を消した彼らに対する失望があったことは、ここにいる誰も知る事はないだろう。
「つまり、プリーストンが貴族であることを知っていた何者かが、当主のいない不安定な今の内に潰しておこうと画策したと。そう言う事ですか?」
今までの事をまとめ、確かめるラウル。
「そう言う事に、なるな......」
辺りに沈黙が広がる。
プリーストンを排除しようとする動きに気付かなかった自分を悔やみ苛立ちを覚える者
その何者かに心当たりがある者
今後の自分の生きる道に思いを巡らす者
八人の騎士の思いは様々。
けれど、たった一つだけ確かなこと
それは
その何者かを許さないと言う気持ち。
「いいか、お前ら」
アイゼンの声が闘技場内に響く。
「これから先、お前らは自らの信じる正義の為に進め。誰もお前らを止めはしない。何があろうと俺達はフェルダンの騎士だ。信じたものに忠誠を誓い、思いのままに戦え」
吸っていた煙草を地面に落とし、踏み潰す。
その目はお気楽な酒に溺れるいつものアイゼンの目ではない。
世界にその名を轟かせるフェルダンの特殊部隊
その隊長の強い目だった。
「これ以上、好き勝手させるな。ここは俺たちの領分。俺たちの手で、守れ」
その声は騎士たちの思いを動かす。
それぞれの瞳がアイゼンと同じ、強い色に染まっていった。


