風になびく絹のように滑らかな白髪。



 伏せられた白く長い睫の隙間からのぞく深い藍色の瞳。



 白磁の肌、すらりと伸びた手足。



 その全てが美しく



 あの場にいて、初めて彼女を目にした人は皆思っただろう



 女神ではなかろうかと。



 《白亜の女神像》を知るものは誰もが彼女をそれと同じだと分かっただろうが、特殊部隊の面々はそれを知らない。



 駆け付けたラウルを始めその場に駆けつけた特殊部隊の隊員たちは思わず見惚れた。



 そんな中、アポロとネロだけは



『ルミ...っ!!』



『本当に...ミア、嬢?...っ!』



信じられないものを見るかのように、呆然とその姿を見たあと、我に返り全力疾走。



号泣しながらルミアに抱きついた。



ルミアもはじめこそ目を丸くして驚いていたが、その姿を確認すると、表情をぱあっと明るくし「もしかしてアポロと、ネロ!?」と尋ねていた。



 彼女が十年前までこの世界にいたということはジンノから聞いた。



もしかして彼女がこの世界にいたその期間に知り合っていたのか。



ラウルはそう聞いているのだ。



アポロは目をパチクリとし、言う。



「あれ、ラウルは知らないんだっけ?あの“伝説”」



「“伝説”? 何だそれ」



「ラウルの兄貴はまだ入隊する前だったからね、あれは凄かったよ...あのねぇ」



「ア、アポロ!!?」



 すると



 感慨深げに過去の思い出を話そうとするアポロを、ルミアが全力で止めにはいるでないか。



 驚くラウル。



 それに気を回す余裕がないのか、ルミアは話題をそらそうと必死。



「ア、アポロさん?ちょっと待って...」



「ルミ何で止めるんだよ、今からあの話しようと思ったのにさあ」



「それはだけはやめてって...お願い!何でもするから!」



「なんでも?」



 にやり。



 まさにそんな笑顔。ルミアに見えない角度で見せたそれに、ラウルとネロは思った。



 ああ、それが目的かと。



「じゃあ今度一緒にお昼たーべよっ」



「え?いいけど、そんなことでいいの?」



「もちろん!!その代わり二人っきりでね、いつもジンノ副隊長に邪魔されちゃうから」



 天使のような笑みを浮かべる小悪魔は、にっこり笑う。



 お人好しルミアはその笑顔を何も疑うことはない。



「分かった。兄さんには内緒、二人だけで」



 まさかそれが謀られたものだと知る由もなく。



 ネロ達は初めて、アポロという男の恐ろしい程の執着心を目の当たりにした。