「そのバケモノに国を守られていたというのに、随分な物言いですね」



 ジンノが冷たくそう言い放つ。



 その目はもう、シルベスターを国王とは見ていない。



「まあね、それに関しては感謝している
 だが君らは予想以上に強すぎた
 強大過ぎる力はいずれ我が身を滅ぼす」



「...つまり、我々がフェルダン王国を危機に晒すと?」



「正確に言えば、君たちが手を組めばこの国を亡ぼすなど容易いだろう言いたいわけだ」



 小さくため息をつきながら、シルベスターは話ける。



「...先日の入隊試験を目にした大臣達の中でそれを危ぶむ声が多く出てね
 今朝の会議で、君らの国外追放が決定したんだ」



 本人の確認もとらずに勝手な決定だこと。



 ルミアは心の中でそんなことを思いながらも、残りの特殊部隊の騎士たちの事が気になっていた。



 ルミアやジンノの力を脅威と思っているのなら、アポロたちにも何らかの処分が言い渡されているかもしれない。



「アイゼンやオーリングたちはどうなる」



 そんなルミアの不安を感じ取ったのか、ジンノがそう聞いた。



 もはや敬語でもない。



「ああ、それは安心して
 流石に何人も切っては、逆に国が危ぶんでしまう。それは国王として避けたい」



「フンッ、好き勝手したい放題だな」



 鼻で笑うジンノ。



 ルミアでも笑ってしまいたくなるほど、自分勝手な言い分。



(でも、みんな大丈夫ならよかった...)



 そう思い、ほっと一息ついた。



 そしてジンノを見上げる。



 ジンノの目に迷いはない。



「分かったよ、出ていく。一応国王の命令だからな」



「そうか、分かってくれて助かるよ
 ...ルミア君は、どうだろうか」



 シルベスターの黄金の瞳がルミアの目を見つめる。



「私も、兄に従います」



「そう...か」



 この時なぜか、シルベスターの表情が陰った気がした。



 だが、ルミアの見間違いだったのかすぐに元のように穏やかな表情に戻る。



「三日あげよう、その間に荷物をまとめ出ていってくれ」



「心配するな、三日と言わず明日には出ていってやる」



 そう言って、シルベスターに背を向け執務室を後にする兄の後を、ルミアは追う。



 そんなルミアの背中にシルベスターの声がかけられた。







「そんなこと言わずに。三日目には弟セレシェイラの婚約発表もあるからな」