朝日の上るフェルダンの空
やはり薄暗い雲が所々にある。
ちっとも晴れやかな気分になれない暗い空だった。
そんな中、
ルミアを抱えたシェイラは迷いなく歩く。
彼が目指したその場所は、ルミアと逢瀬を重ね、数え切れないほどの約束を交わした、魔法学校の裏庭。
一本のサクラの木の前に立ち、シェイラはその桃色の花を見上げた。
「ねえ、ルミ。君は覚えているかな、この花を咲かせたときに誓った“約束”を...」
サクラと雪の舞い散るその場所で、星降る夜空の下
『貴方の為ならいくらだって闘えます』
そう言って君は『大丈夫。もう死んだりしませんよ』と笑ったね。
死にかけた本人が、そんなことを言うもんだから
その言葉に俺はこう返した。
『今度同じようなことがあれば、俺は迷いなく死を選ぶから』と
「...あの日君は、冗談半分に聞いていたのかもしれないけど、俺は本気だったよ」
君がいない世界で生きるのは、もう、嫌だ。
十年前、散々味わったのだ。
残されたものの苦しみを
世界がモノクロになっていく虚しさを
空っぽの心で生きていく辛さを
シェイラはサクラの下に座り込み、ルミアを力強く抱きしめた。
魔力供給は続けているが、明らかに鼓動は小さく、呼吸はわずかに感じられるほど
時間が、命の終わりの時間が迫っている
熱が奪われていく冷たい体を温めるように、強く強く腕の中に抱く。
何で、こうなってしまったんだろう
白い病室で何度も繰り返した問いが、頭の中に浮かぶ。
あの時、アネルマへの攻撃を『やめろ』と止めたから?
戦いに巻き来ないように国から出すと決断したから?
俺が影の部屋から出てきてしまったから?
それとも
出会ってしまったから?
あの日、この場所で
真っ白な雪に包まれた君と自分が出会ってしまったから?
元をたどれば果てしない。
どれかを間違えなければ君はこんなに冷たくなってしまうこともなかったのだろうか。
こんなに胸を痛めることはなかったのだろうか。


