「まあ...話は逸れてしまったが、今言った通りあの子はクリスタリア家の血を継ぐ、れっきとした王族。先の戦いでオルクスの本能が薄れ、王族の血がようやく目覚めたんだろう。結果瞳にもその色が現れた」
リンドヴルムはそう言うと、一口紅茶を口に含み、想いを馳せるように上を見上げる。
「昔からあの子はオルクスの血の方が強かったからね、あのまま王族の血は目覚めないのかと思っていたが...許されないことは分かっているが、最後に一目見ることが出来たら...きっとミントによく似ているんだろうなあ」
懐かしむリンドヴルムを、それまで一度も口を出してこなかったシュネシファーがギロりと睨みつけた。
その痛い視線を感じ、リンドヴルムは苦笑する。
そして不機嫌を顕にするシュネシファーの元へ向かい背後からぎゅっと抱き締めた。
「ごめんな嫌な思いをさせて。怒ったかい?」
「別に...向こうの世界で誤解はとけたんだから、怒ってなんかいないわ」
ぷいっとそっぽを向いて強がりをいうシュネシファーに愛おしさが込み上げる。
「愛しているよ、シュネシファー。俺のたったひとりの愛しい人」
「......私もよリンちゃん」
二人の姿を何も言わず遠くから見ていたイーリスとリュカはため息をつく。
結局彼らは自分の事ばかりだ。
昔も、今も。
それでも少しはましな人間になったと思えるのは十年と言う時間が二人の仲を取り持ってくれたからだろう。
「...あの子が生きていれば、もう一度心から謝りたかったわ...ちゃんと謝って、母と認めてくれなくてもいいから過去の罪を償いたかった」
「そうだな...もっとあの子に伝えなければならないことがあった。ミントのことも、あの子自身の事も...」
「後悔してますか」
イーリスのその問に二人は振り向き、「ああ、もちろん」と口をそろえてそう言った。
彼らの心にもたくさんの後悔がある。
それが確認できただけでも良かった。
「...だったら、彼女が生きた暁には、必ず伝えてやってください。貴方がたが伝え損ねた想いを」
リュカとイーリスはそう言い残し、静かに部屋を後にした。
リンドヴルムたちは、その後姿を見送ると窓の外に目をやる。
そこには、人々の心を映したような暗くどんよりとした雲が空を覆っていた。


