ある新月の夜。
二人は何かに導かれるように夜の街を歩いた。
そして一つの、小さな教会の前に立った。
その時に悟った。
ああ、自分たちは戻るのか、と。
「――で、今、私たちはここにいるわけだ」
リンドヴルムはそう言うと、再び紅茶に口をつける。
話を聞いていたイーリスたちは黙ったまま。
「どうした、他に聞きたいことがあったら今聞くといい。君たちとこう、面と向かって話したことはなかったからな」
イーリスとリュカの存在は昔から知っていた。
当時は二人ともまだ小さく、子供で
やけにルミアと親密な友達、ぐらいにしか認識していなかったが。
それが十年ぶりにこの世界に戻って来てみれば、これだけ立派に成長を遂げているのだから驚かないわけがない。
聞けば、十年前ルミアが消えたことをきっかけに、ジンノと共に騎士の道に入ったそうな。
もう二度と彼女を、大切なものを失わないように、強くなるために。
その彼らが知りたがっている。
ルミアと、自分たちの事を。
純粋に、知ってほしいと思った。
ルミアのことも
ジンノの事も
自分たちの子供たちに面と向かって言えないことでも、彼らになら素直な気持ちを、事実をありのままに話せると思ったのだ。
「...では、聞かせてもらう。ルミアとジンノに血縁関係はないと聞いた。それとルミアの瞳が黄金色になったことに関係はあるのか」
リュカの低い声が部屋に響く。
「...ああ、それも言わなければな。...詳しく話せばそれこそ長くなるのだが、まあ話すべきか...」
時は二十八年前に遡る。
王族分家クリスタリアの暗殺事件
史実ではそれによりクリスタリアは滅亡した
が、
実際は、占星術師クダン家の指南により、アイルドールにその半数を避難させることが出来た
その時、当時の特殊部隊副隊長だったリンドヴルムは極秘任務として、クリスタリア一族のアイルドール亡命の手助けをしたのだ。
おかげでその亡命自体は何とかうまくいったのだが、ローグが語っていたように、クリスタリアの人を想う心優しき人柄ゆえ結局はその後一年もたたずに滅んでしまった。
たった一人を除いて。
◇
一人、アイルドールで生き残った人物がいた。
それはクリスタリア一族最後の姫
彼女の名は
ミント・クリスタリア
そしてそれは、ルミアの本当の、母親の名だった。


