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十八時間
病室を離れた騎士たちは思い思いに時間を過ごす。
心の中に一人の麗しき騎士の存在を抱えながら。
王宮内のとある一室。
そこには四人の人間がいた。
ソファに深く座り紅茶を飲むプリ―ストン夫妻
その様子を意味深に見つめるイーリスとリュカ。
イーリスたちはルミアと両親の確執を知っている。その理由も。
だからこそあえてルミアの死について二人が思うことは聞かない。聞きたくもない。今更ルミアに対する謝罪を言ってきたとしても、怒りの方が勝ってしまうからだ。
「...一体今までどこへ?この十年間何故姿を消していたんです」
イーリスが尋ねる。
わずかなイラつきを孕んだ固い声。
紅茶を口に含みながらリンドヴルムはフッと笑う。
「全く...昔とちっとも変わらんね君たち二人は。俺たちに対する警戒心の塊だ」
「...そんな事はどうでもいい。質問に答えろ」
「はは...そうだな、話せば長くなるが...お前たちは十年前にルミアが殺人鬼に殺されかけて異世界に飛んでいたことは知っているな」
「ああ」
リンドヴルムはソファの背もたれに頭を預けて天井を向くと、懐かしそうに語り始めた。
「...あれから俺は、俺達は...消えたルミアの後を追い、異世界に向かったんだ」
一角獣ノアの力を借りて、二人は時空を飛んだ。
時空を歪めると時間軸が大きくずれることがある。
ルミアの場合は数年だったが、二人の場合は数十年。
結果、時空を超えた先で三人は同級生だった。
『雪乃ルミ』、『辰巳』、『美和子』と名を変えて。


