「さっすが!!兄貴すげえーー!!!でも遠慮がねえ!!」



 ラウルは興奮し、嬉々として目を輝かせている。

 

「加減はしてやったさ。ところでラウル、相談なんだが」



「ん?何?」



 イーリスが体をかがめて、ラウルに顔を近づけた。



 ラウルは自分の前に突き出された鼻先を優しく撫でながら相槌を打つ。



「ここの敵は俺に任せろ。ラウルお前はあの魔法を使えないか?『石』を持ったグロルの部下たちが厄介だ」



「あの魔法って...まさか...」



 『あの魔法』に心当たりがあるのか、ラウルが心底いやそうな顔をする。



「俺、遠距離の攻撃苦手なんだってぇ...」



「大丈夫だよ、自信持て、な?」



 イーリスは獣の姿のままニコッと笑う。



 その笑みがやけに怖くて、ラウルはぶるりと背筋を震わせた。



「...わ、分かったよお...」



 しぶしぶ頷き、ラウルは肩を落とす。



 



 イーリスが敵をその前足で軽々とばぎ払っている間、ラウルはその足で王都の中央広場に向かっていた。



 ラウルに近寄ってくる冥界の使者たちはイーリスの分身である狼たちが倒していく。



(もう...苦手だって言ってんのに。あーあウィズがいねえのに成功出来っかな...いやいやしっかりしろ!俺一人でもできる!!)



 パンパンと頬を勢いよく二回たたく。その赤い頬のまま、ラウルは中央広場のちょうど真ん中、つまり王都のど真ん中にどかっと腰を下ろした。



 あぐらをくみ、その両脇に自身の拳をおろして地面につける。



「ふううーー」



 と、大きく息を吐いてラウルは眼を閉じた。



(集中しろ...王都全体に意識を集中させるんだ)



 みるみるうちにラウルの集中力が上がっていく。



 それに比例して、ラウルの周りの空気にバチバチと音を立て始めた。



 ラウルは雷の魔力を持つ魔法使い。



 体内に膨大な量の電気をため込んでいる。



 ラウルの集中に伴い、体内の電気と空中に帯電している微弱な電気とが反応してバチバチと音を立てているのだ。



(...見極めろ、味方もいるんだ、やるのはグロルの部下だけ...)



 どんどん増幅していく電気と集中力。



 そして



 それが充分に達した時






 ラウルの目がゆっくりと開かれた。