力強い彼の瞳。
彼のように、アポロの様になりたかった。
いつだって彼は、光だったのだ。
ジンノにとってのルミアがそうであったように。
ネロは一度目をつむり、覚悟を決めたように目を開いた。
「...分かった、言う通りにする。だが一つ聞かせてくれ」
「何だ、何を聞きたい」
ようやく頷いたネロを見て、グロルは笑う。
ネロは一つ息をついて、重い口を開いた。
「グロルさん...貴方は母を、俺の母を...ほんの少しでいい、今でも愛してますか」
そこに居た皆の目が丸くなる。
この戦場において、こいつはいったい何を言っているのか。
だが、即答すると思っていたグロルは目を丸くしたまま、何も答えなかった。
見かねたアネルマがおかしそうに笑いながら答える。
「あはは!ネロ貴方何を言っているの?そんなわけないじゃない
この人は自分以外誰一人信用していないわ、もちろん私の事も利用できる一つの駒としか考えていない。愛してるなんて...そんな感情この人の中にはないのよ!変な期待をする方が間違ってる
もっと単純に考えなさい。貴方が言う通りにすれば母親は死なない、言う通りにしなければ死ぬ。それだけよ」
ねえ、お父様?
アネルマがそう聞くと、グロルは我に返ったよう「...ああそうの通りだ」と頷いた。
しかし心ここにあらずといったように見えたのは、気のせいだろうか。
返答を聞いたネロは「...そうですか」と悲しそうに答える。
そして、ジンノに向かって一歩を踏み出した。
まっすぐに、前を向いて歩く。
「...そうだ、それでいい。ジンノを殺せ。たとえその身が滅ぼうと」
一歩ずつ近づく。
その様子をグロルとアネルマは薄く笑いながら見つめていた。
ネロが、ジンノの目の前に立つ。
黒い皮手袋に包まれた彼の左手の中にあるのは紛れもない『石』。
「ジンノさん...すいません」
「別にいい。お前が決めたことだ」
二人の会話が教会に響いた。


