櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





「...おい、あんたら街に向かえ」



 ジンノは振り向き、リンドヴルムとシュネシファーにそう言った。



「闇の魔法使いならあの『石』もどうにかなるだろう」



 その指示に初めは戸惑いを見せたが、すぐに真剣な顔に戻る。



「いいか、あの『石』は埋め込まれた相手の体の魔力を吸収し始める。体内に残る魔力が完全に無くなるまで延々とそれが続くんだ。逆に埋め込まれたり触れたりしなければ魔力の吸収は行われない
 すでに特殊部隊の騎士が四人街にいる。『石』の特性は知っている。もし直面してもどうにか対処しているだろうが、なにせ相性が悪い」



 だから、頼む。ここは俺がどうにかする。



 その一言を聞くと、二人は頷き教会を急いで立ち去った。








 教会から走り出ながら、二人は会話を交わす。



「しばらく見ないうちに随分立派になったな、ジンノは...美和子もそう思わないかい?」


「ええ。小さいころから強かったけど、今の私たちじゃ敵わないわね、辰巳」



 本来の名前と違う『名』



 ルミアが聞けば分かるそれの真実が分かるのは、この事件が終焉を迎えたその後のはなし。









 グロルはにやにやと笑いながらジンノに向かって言う。



「いいのか?あいつらを行かせて。お前ひとりで相手できるのか、我々を」


「元々こうするつもりだった。特に問題はない」


「ふん、減らず口を。ネロ!!居るのだろうこちらへ出てこい!」



 グロルの声が教会内に響いた。



 すると、いつからいたのかグロルの背後にある扉の奥からピエロの仮面を被った男が静かに、姿を現した。



 そして仮面をゆっくり外す。



 そこに居たのは間違いなくネロ。



 特殊部隊の、ネロ・ファーナーだった。



「ネロ...!」



 アポロが顔を歪ませる。



 彼が治癒していたシルベスターはすっかり良くなったようで、目を閉じ眠っていた。



 その眠る彼を守るように、立ち上がる。



「彼は私の実の息子でね。アネルマと母親は違うが、実力は折り紙付き。街での騒ぎ、この『石』の入手、これらは全て彼の仕業さ。さあネロ、『石』を使い、お前の手でジンノをこの世から葬り去るのだ」



 仮面をとったネロは無表情のまま、その目でジンノをとらえた。