「......ははっ」
グロルが小さく笑う。
「分かっていないのはお前たちの方だ!俺は何も闇の魔力が増幅するだけの理由でこの夜を狙ったわけじゃない!!」
これを見ろ!!
その言葉に、ジンノ達の視線が注目する。
グロルが懐から出したものは黒色の『石』
「ジンノ、貴様はこれに見覚えがあるな?」
拳程の大きさのそれに、ジンノの目が大きく見開かれた。
そう
それはかつてルミアを死に追いやり、ジンノに大きなけがを負わせた殺人鬼が使っていた『石』
ジンノの左目に埋め込まれた『石』だった。
「気が付いたか。これはお前のその左目のものと同じだ」
リンドヴルムとシュネシファーがチラリと横目でジンノを見る。
ジンノはサングラスをゆっくりとはずし、火傷を負ったようにただれた左の目元を手で覆う。
まるで呼応するようにズキズキとうずくそこを落ち着けようと。
「どうやってこれが造られるか知っているか?これはなあ、闇の魔法使いの死体から抜き取った心臓そのものだ!」
魔法使いが死ぬには、方法が二つ存在する。
一つは体内を循環する魔力を抜かれた場合
これには闇の魔法によって抜かれる場合と、年をとったり病気にかかったりして衰弱するとともに魔力が減ってしまう場合がある。
二つ目は心臓を壊された場合だ。
普通の人間と魔法使いの人間が違うのは、生きていく源が血であることと魔力であること。
魔力が源である魔法使いはその魔力を作り出す心臓の作りも人と異なる。
そして目の前にあるグロルの手の中の『石』がそうだと言っているわけである。
魔法使いにとって心臓は魔力を生み出す泉のようなものだ。
その体の主が死んでしまった場合、心臓の魔力を生み出す能力はストップし空っぽの状態になる。
本来なら、それで終わり。
しかし
「朔の夜にある魔法をかけた心臓だけは、魔力を底無しに吸い取る『石』へと変わる」
知らなかった事実に皆が驚いた。
「あの殺人鬼がこれを発見してくれてね。まあ、ジンノは例外だったようだが」
「まさかあの殺人鬼も黒幕は貴様か!!」
「その通り...と言いたいところだがあれは俺の部下であっただけで、何も指示は出していない。勝手にやったことだ」
無責任な発言に皆が眉間にしわを寄せる。
あの事件では必死の捜索にもかかわらず幼い命がいくつも奪われた。
だが裏に王族であるフィンス家が絡んでいたとするなら、発見できなかったのは当然。
「今、街の方に向かわせている俺の部下はこの『石』と同じものをいくつも持っている。ジンノ、お前は殺せなかったが他の魔法使いはどうだろうなあ。どれだけ抵抗しても結局は魔力を抜かれて終わりだろう。さあ、どうする?フェルダンの魔王」
「...クズが」
ジンノがぼそりと呟いた。


