櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





 はあ...とリンドヴルムはため息をつく。




「私たちはだいぶ、ジンノに嫌われているらしい。まあ自業自得だな」


「...そうね、私たちの行いのせい...」


「だが、呼ばれたからには『オルクス』の責務を全うしようじゃないか」




 そう言うと首をポキポキならして、懐からタバコをとり出し一本口にくわえた。



 シュネシファーも先ほどまでの殊勝な様子はどこへやら、たれた横髪を耳にかけ、その表情から笑みを消す。



「グロル。一体お前が何をしたのか知らんが、うちの息子がお怒りだ。状況的にも黒だしな。そろそろ観念したまえ」



 そこに立つ三人はフェルダンの誇る最強の騎士一家



 グロルにとっては最大の誤算だった。



 ぎりりと歯を食いしばり、ジンノを睨み付ける。



「ふざけるな...!!」





 〈ダーク〉アンタ-・イルディッシュ





 ピエロの男と同じ呪文をグロルが唱える。



 現れた闇はピエロのそれとは比較にもならないほど小規模だったが。



 グロルの足元に広がった闇から、次々と出現する真っ黒の冥界の使者たち。彼らがグロルの指示でリンドヴルムとシュネシファーの元へ向かい襲い掛かった。




「ほお、冥界の使者をよびよせたか...」


「くだらん」


「二人は下がって...私が一掃いたしましょう」



 腕を組み、全く動じていないジンノとリンドヴルムを置いて、シュネシファーが静かに進み出た。





 〈ダーク〉アッテンタート





 まさに一瞬の出来事。



 シュネシファーの呪文により、黒い斬撃が飛び出し、文字通り使者たちを一掃したのだ。



「グロルさん?あなた分かってないの?今宵は朔。闇の魔法使いは力を増幅できるけれど、それは何もあなただけじゃなくってよ。私たちもそうだって覚えてなかった?」



 ジンノを始め、リンドブルムとシュネシファーもまた闇の魔力を使う。



 そのことを思い出し、グロルは憎々しげに顔を歪ませていた。