―――
教会内
アイゼンとオーリングを外に出したシルベスターを、グロルはまさに唖然と言った表情で見つめていた。
「お前...馬鹿なのか?」
「...なんだよグロルが邪魔だって言ったんだろ?さあ!これで邪魔する者はいない。心置きなく俺を殺せ」
両手を広げ、まるで迎え入れるようにして待つシルベスター。
しかしグロルはなかなか動き出さない。
そんな姿を見て、アネルマは不審そうに顔を向ける。
「どうしたの、お父様。こんな機会ないんだからやってしまえばいいじゃない。犯人なんて後からいくらでもつくれるわ。何ならアイゼンとオーリングの二人を洗脳してもよくってよ」
アネルマの言う通り、これはまたとない機会。
それは分かっているのだ。
ゆっくりとシルベスターに向かって歩みを進める、そのグロルの表情は何かに怯える様だった。
対してシルベスターはとても穏やかな表情。
その彼の目の前に立つとグロルの手はシルベスターの首へと伸びる。
その手は震え、怯えた表情は消えぬまま。
「...どうしたグロル、何を怖がっている」
「...っ!!何も怖がってなど...!」
「だったらさっさと殺せ。一思いに楽にいかせてくれよ」
その言葉を聞き、グロルはぐっと首を絞める手に力を込めた。
「......っ、うぅ...っ...」
息が出来ずに苦しむシルベスター。
同時にグロルの闇の魔力によってシルベスターの魔力さえも吸い取られて行ってしまう。
徐々に意識が遠のいていく中、最後に彼が放った言葉は。
「...ごめ...っ、グ...ロ、ル......」
グロルへの謝罪。
バシュッ――――!!!
その瞬間グロルとシルベスターの間に黒い何かが飛んだ。
首を掴んでいた手が離され、一気に力の抜けたシルベスターの重い身体が床に投げ出される。
「おいおい、よけるなよグロルさんよお」
突然聞こえてきた、ここにはいないはずの人間の声にそこに居た皆の視線が集まった。
グロルに至ってはシルベスターに一切見せることのなかった鬼のような怖い顔でその人物を睨み付ける。
「貴様...なぜここにいる...!」
そこに居たのは真っ黒な髪をなびかせるジンノ。
白い歯をのぞかせて笑う、恐怖の魔王だった。


