ドオオォーーン!!!





 歓喜に沸く教会に、突如響く轟音。



 その場にいた皆がびくっと固まる。



 静寂が訪れたかと思うと、すぐにバンッと教会の扉を勢いよく開ける音が響いた。



「ハアッハアッ...国王陛下!!ラヴェンデル地区で爆発が起きました!!敵襲かも知れません!!」



 鬼気迫る様子で衛兵がそう叫ぶ。



 顔を険しくさせたシルベスターが、特殊部隊隊長のアイゼンと視線を合わせると、アイゼンはこくりと頷き立ち上がった。



 シルベスターはそれを確認すると、教会内に居る全員に聞こえるように声を張る。



「結婚の儀は緊急事態によりいったん中断とする!これからの動きに関してはアイゼンの指示に従うこと!」



 その言葉を合図に皆が動き出す。



「ラウル!ウィズ!医療班を連れてラヴェンデルに向かえ!!」



 普段の酒におぼれたアイゼンとは思えない、隊長らしい姿。



 実際、ジンノたちが国を出てから一切の酒に手を出さなくなったので、見た目のやつれた感じは大分なくなったが。



 そのアイゼンの指示にラウルとウィズはすぐに従う。



 医療班を従えて教会を出て行った後も、アイゼンは残った衛兵や騎士たちに次々と指示を出していった、



 外では絶えず爆音が聞こえている。



「セレシェイラ殿下、アネルマ妃、お二人も直ちにここを離れて...」



 主役である二人に駆け寄り衛兵がそう言いかけると、その衛兵の肩を突然誰かがつかんだ。



 驚き振り返ると、そこにはグロルが。



「二人は私と共にここに残ってもらう、君は街に行きなさい」


「で、ですが、ここは危険です。すぐにでも王宮に...」


「ここには特殊部隊隊長もいる。下手に移動するより安全だ」


「しかし...」



 渋る衛兵に、グロルは詰め寄る。



「だまれ、何度も言わせるな」



 背筋の凍るようなグロルのどす黒い何かを感じ取り、衛兵は思わず息をのむ。



 呪い殺そうとでもするかのように、真っ黒な瞳がぐっと細められ、その手は首元へと伸びてわずかに締め上げられる。



「分かったな。貴様ごときが私に逆らうな」


「......っ!!...はい」



 衛兵は縮み上がり、逃げるように離れていった。



 辺りを見回れば、そこはもうすでに閑散としており、式に参列していたほとんどの貴族たちは王宮へと避難したようだった。



 残っていたのはグロルとアネルマ、セレシェイラ、国王シルベスター、特殊部隊隊長アイゼン、副隊長オーリングの六人。



 教会内には先ほどまでの穏やかで華やかな空気は一切なく、ピリピリとした緊張感だけが充満する。 



 そんな中、グロルは一人、不気味な笑みを浮かべていた。