櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





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 アイルドールに古くから伝わる一つの童話。



 それは悲しい悲しい人魚のお話。




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 あるところにそれはそれは可愛らしい女の子がいました。



 彼女は自然をこよなく愛する心の優しい少女でした。



 そしてある男性に恋に落ち、やがて結ばれます。



 彼女は幸せでした。



 しかしその男性はとてもひどい男でした。



 女にだらしなく、金を湯水の様に使い、酒におぼれる。



 彼女が何を言ってもその男は遊ぶことをやめなかったのです。



 もうそこには愛はありません。



 彼女は失意のうちに湖に身を投げ出しました。



 今もなお、彼女の魂は水の精霊『人魚』となって湖の中で漂い続けています。



 たった一人



 愛する人の心を求めて。




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 その童話は代々親から子供へと語り継がれ、



『湖に近づいてはなりません。心をとられてしまいますよ』



 と教えられる。



 ゆえにアイルドールの人々は、けして湖に近づかない。



 その水に触れることすらしない。



 それが当たり前だった。



 その裏に隠された真実があることを知らないまま――






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