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アイルドールに古くから伝わる一つの童話。
それは悲しい悲しい人魚のお話。
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あるところにそれはそれは可愛らしい女の子がいました。
彼女は自然をこよなく愛する心の優しい少女でした。
そしてある男性に恋に落ち、やがて結ばれます。
彼女は幸せでした。
しかしその男性はとてもひどい男でした。
女にだらしなく、金を湯水の様に使い、酒におぼれる。
彼女が何を言ってもその男は遊ぶことをやめなかったのです。
もうそこには愛はありません。
彼女は失意のうちに湖に身を投げ出しました。
今もなお、彼女の魂は水の精霊『人魚』となって湖の中で漂い続けています。
たった一人
愛する人の心を求めて。
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その童話は代々親から子供へと語り継がれ、
『湖に近づいてはなりません。心をとられてしまいますよ』
と教えられる。
ゆえにアイルドールの人々は、けして湖に近づかない。
その水に触れることすらしない。
それが当たり前だった。
その裏に隠された真実があることを知らないまま――
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