「僕は行く、もう止めるなよ」
ヨハンはそう言うと、テオドアの掴んでいた手を振り払って再び歩き始めた。
その後ろ姿はもう子供などと呼べるようなものではない。
明らかに人の上に立つ、王の資質を持つ人間のものだ。
(大きくなられたなあ......)
そう感心しながら、テオドアは手を伸ばす。
人として大きくなったといっても、子供であることに変わりはないのであっけなく囚われてしまうヨハン。
「なんだよッ!もういいだろ離せーー!」
「まったく...分かりました。しょうがないですから、私も一緒に行きます。それで妥協です、いいですね」
「......え?」
そう言ってテオドアは先に立ち歩き始めた。
彼は正義感が強く、おまけにプライドも人一倍高い。
頭を下げに行くと分かっていて付いて来るとは思っていなかったのだ。
「...何驚いているんです」
「え...あ、だって...」
先程までの勢いがそがれたのか、戸惑うヨハンに、一つため息をつく。
「私は補佐官として、ヨハン様が王子という立場に恥じぬ行いができるよう、導くことが使命です。これからとる行動が正しいと判断したまでのこと...私だって自分が間違っていると思ったら改めますよ」
そう言ったテオドアの耳はほんのり赤い。
自らの過ちを認めることは誰しも恥ずかしいものだ。
特にプライドの高い彼にとっては。
それが分かるとヨハンは見る見るうちに笑顔になっていく。
それはもう、年相応の可愛らしいものに。
「...!!テオ、かわいいぞ!」
「はあ!?何をッ」
「じゃあ行くぞ!おおー!」
「ったく...」
そして二人は王宮を出て街へと繰り出す。
お転婆な王子に振り回されながらも、さほどまんざらでもない堅物補佐官なのだった。


