「お前とお前の弟・カリスはいつも正義感にあふれていて、口から出ることは必ずと言っていいほど正論だ。当主の教育のたまものだな」
「...それは嫌味ですか」
「違う、嫌味で言っているんじゃない」
再び対峙する二人。
まだ十代の若い少年に、こんなに意地になるのも大人げないが、テオドアの苛立ちも止まらない。
「お前たちはいつも正論を言う。だから僕たち王家の人間もお前たちの一族の人間を重宝するのだろう」
テオドアの一族・ゼクレス家は昔からアイルドール王家に代々仕えてきた由緒ある一族。
父親は国王の補佐官をしており、テオドアの弟カリスは国王軍第一部隊の隊長を務める国内最強と名高い騎士だ。
幼い頃から全てを完璧にこなせるよう英才教育が施され、正論という正論を叩きこまれる。そう言う一族だからこそ、アイルドール王家は彼らを重宝するのだろう。
「お前たちが言うことは理解できる、だが、正論ばかりが正しいのか?」
「...どういう意味です」
「僕が謝罪に行くことは王家の人間としては間違っているかもしれない、でも一人の人としては正しいんじゃないのか?だから父上も許してくれたんじゃないのか?」
ヨハンは時に、年不相応な発言をすることがある。
今回もそれだった。
「僕はテオとカリスに放火犯を捕まえてくれと頼んだ。その為に碧の部隊まで作り、その隊長をお前たちに任せた。だがどうだ、長い時間をかけておいて、たくさんの被害を出し、その上お前たちは犯人を捕えられなかった」
「それは...!」
「理由は明白。犯人は貴族街と市街区両方で同時に放火を働いたからだ」
貴族街と市街区で同時に放火が起これば、碧の部隊は必ず貴族街へ向かう。
それが王家に仕える身として正しい行為だから。
犯人はそれを利用した。
貴族街と市街区、本当の放火は犯人自身が行い、もう一方では金で雇った別の人間にボヤを起こさせる。
場所を変え、貴族街と市街区でランダムに放火を行う。貴族街での放火の疑いがある限り、騎士たちは貴族街へと向かうしかなくなる。
犯人は取り調べの中で言っていた。
『貴族たちは傲慢で大切なのは自分たちの命だけだ。碧の部隊が市街区の方へ部隊の一部の人員を割く事すら許さない。どうしようもない屑だらけだよ』
実際のところ本当にその通りで、最後の放火の時も、貴族たちは小さなボヤにもかかわらず自分たちでは何もせず碧の部隊を集め、何時間も念入りに消火活動をやらせた。
その間に市街区では一つの家が丸々焼き尽くされていたというのに、それに駆けつけることすら許さなかったのだ。
「僕は言ったよな?貴族の者達が何を言おうが、市街区にも部隊の人間を行かせろと。なのにお前たちは言う通りにしなかった。僕の言葉より自身の正義と貴族たちのいう事に従ったんだ」


