櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





「...二人とも、何か勘違いしていない?」



 ルミアは悪戯っぽく微笑む。



「私もオルクスの一人。クダンの占いを疑うつもりは毛頭ないわ。彼女がそういうなら本当なんだと思う。それをふまえた上で、私は生きることを諦めたわけじゃない。死ぬ気なんてさらさらないんだから!」



 その発言に三人は目を丸くする。



 クダンの占いは外れないと言いながら、彼女は死なないと言う。



 自分の死を宣告されたのに。



「...何か考えでもあるのか?」



「この二日間、いろいろ考えていたと言ったでしょう?せっかく十年もかかって生き返ったんだから、そう簡単に死ぬわけにはいかないわ」



 彼女は笑う。



 まるで何ともないように、美しく。



 信じたものに裏切られ、己の死を宣告されても、彼女は強くあり続ける。



 それは《オルクス》の意志か



 はたまた、騎士としての誇りか



 どちらにせよ



 その姿はまぶしかった、見ていられないほどに。



「ローグさん、ちょっと相談したいことがあるから来て?」



「は、はい!!」



「二人ともここで待ってて、ちょっと出かけてくるから。戻ってきたらすぐに出発するからその準備もやっといてね!」



 ベットから飛び降り、イーリスたちの返事も聞かずに、ローグの手を取ってルミアは走り出す。




 ◇




 残された二人は走り出ていったその後姿を見つめる。




「...リュカ」



「ん?」



「あの子は強いな、昔も今も...」



「...ああ」




 思い返される幼い頃の彼女の姿



 その小さな手でどれだけ救われてきたか



 地獄から救いあげてくれた真っ白な少女



 弱さを見せない彼女の背中を見、想う。





「...何が何でも、守るぞ」



「分かってる...その為に俺たちは、ここにいる
 ...もう、あんな思いはまっぴらだ」




 本人の知らないところで、二人の騎士の譲れない固い誓いが交わされていた。