「ジンノ様は貴方を守ろうとした...やり方は間違っていたかもしれません、でも分かってください」
ローグは立ち上がり、ルミアの肩をぐっと握った。真っ赤な瞳は揺れることなくルミアの藍色の眼を見つめる。
「ルミア様、私たちは貴女に生きてほしい。主の危機に駆けつけたい気持ちも分かりますが、今回ばかりはその騎士道はお忘れください。セレシェイラ殿下の事は大丈夫です、ジンノ様がどうにかしてくださいます。あの人はそのために行ったも同然ですから。だから、安心してこの国に居てください」
まっすぐなローグの言葉が心を揺り動かす。
だが
ルミアの心は決まっていた。
「ありがとう、ローグさん......でも...ごめんなさい」
「え、」
「...この二日間、夢の中でずっと考えてた。どうしてあの人が私にあんなことしたのか、あの人の表情の意味、涙の意味、言葉の意味...今のローグさんの話聞いてなんとなく分かった」
「じゃあ...!」
「でも、それでもやっぱり、私は騎士なんです......それしかないんです」
悲しいことに。
そう言って、ルミアは笑う。
そうだ
幼い頃から、たった一つそれだけの為に生きてきた。
誰からも愛されることのなかった人生で、ルミアは立派な騎士に成ることだけを糧に前に進んできたのだ。
ジンノ、イーリス、リュカ、セレシェイラ
数えるほどしかいない心を許せる家族や友を失うことがないように。
「この国に居たって、絶対助かるって保証はないんでしょう?なんてったってクダンの占いは絶対だもんね」
「...それは...」
「だったら私は行く。シェイラさんの元に、フェルダンに」
止めても無駄だから。
固い決意を見せるルミアに呆然とするローグ、残りの二人も呆れた表情だ。
本心ではわずかな望みにすがってでもルミアに生きていてもらいたい。
だが
(...ルミアらしいと言えば、らしいか...)
「ルミア」
イーリスはルミアに向かい合う。
「......俺達と初めてであった時、君が言った言葉覚えているかい?」
人生のどん底に沈んで、もうもがく事すら諦めていたリュカとイーリスを救い上げてくれた。
誰にも認めてもらえなかったその存在を受け入れ、認めてくれた。
そして、家族にしてくれた。
「俺達は血は違えど、君の家族であり兄妹だと、今でも思っている。だから家族の一人として、君のこれから取る行動には賛同できない」
「たとえそれが不確かな未来予想だったとしても、自ら死にに行かせるほど俺達は愚かじゃないし、それ以上に失いたくない、俺達を救ってくれた恩人を、二度と...」
二人の言葉はとても温かく、そして、重かった。


