櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ




「ルミア様」


「?」


「ジンノ様が貴女様にした仕打ち、それには理由がございます」


「え、...」


「おいお前ッ...何を!?」



 突然の発言に戸惑うルミアに、一体何を言い出すんだとうろたえるイーリス。
 しかし、ローグは構わずに声を張る。
 




「凶兆の卜(うらべ)が出ました。ルミア様、貴女は、この戦いで...死にます」






 ローグの脳裏に占いを伝えたときのジンノの様子がよみがえる。






『貴方は、この戦いで、最も愛する人を、再び失うでしょう』



 それを伝えたときのジンノの表情は忘れない。



 彼はオルクスの人間。クダンの占いの、真実の卜の正確さは誰よりも知っている。



『貴様!!......ッ!』



 胸ぐらをつかみ、ローグに滅多な事を言うなと怒鳴りつけようとするが、その嘘偽りを映すことのない真紅の瞳を見るとその言葉が、その予言が、真実であることを嫌が応にも理解してしまう。



『...ッ...嘘、だろ?...嘘だと言ってくれ』



 懇願に近いそれはあまりにも切実で



 何も答えないローグに、ジンノはがくりとうなだれるように膝をついた。



『我々の占いは...けして外れない。未来を変えようとしても無駄です
 ...ですが、それでも可能性を、奇跡を信じたいのであれば...この国から出さないことです』



 アイルドール王国は絶対的防御を持つ、前世界でも稀に見る国。



 その出入りは特定の人間にしか不可能となれば、その人物を封じることで閉じ込めることが出来る。



 いわばこの世で最大・最強の砦であり、同時に牢獄ともなり得るわけだ。



 だからこそ当時のクダンはクリスタリアをこの国に逃がした。



 わずかな希望を信じて。



 その時は、クダンにクリスタリアを留めておけるような力がなく、失敗してしまったが



(ジンノ様であれば...)



 愛する者の死を一度身を持って体験した彼らであれば、その奇跡が起こるかもしれない。



 未来を変えるという奇跡が。