櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





 クダン一族



 それは千年以上も昔からつい数十年前まで、フェルダン王家に専属で仕えていた占星術師の一族だった。



 いや、正確にはフェルダン王家と言うより、王家分家・クリスタリア一族に仕えていたといった方が正しいだろう。



 その生まれはルミア達《オルクス》一族と似たようなものだ。



 かつてフェルダン王国を造り上げた《神》の血を色濃く受け継ぐフェルダン王家そのものを愛したのが聖者《オルクス》とするなら



 《クダン》とはフェルダンに降り立った女神と謳われるクリスタリア一族に心を奪われた一族と言える。



 戦闘に秀でた《オルクス》と違い、星を読み行く末を占うことで守る道を選んだ《クダン》



 やり方は違えど、その真意は愛したものを守ることだけだった。



「......我々はその星を読む力で、クリスタリア一族が滅ぼされることを知りました。今、フェルダン王国では、クリスタリア一族は壊滅したとされていますが、実際のところその半数以上をこのアイルド―ルに逃すことに成功したのです」



 しかし



 クリスタリア一族は、愛国心の塊のような一族だった。



 一度アイルドールに逃げた者たちも、自分たちを滅ぼそうと目論んだ者が国に残っている事実に耐えかね、クダンの目を盗んでフェルダン王国に戻ろうとしたのだ。



 そして、その道中、国に戻ってからなど、タイミングはばらばらだったが、いずれもその命を無残に奪われてしまった。



「......結果、形は違いましたが《クダン》の予言は当たった...」



 どんなに抗おうと、避けようとしても、けして外れることのない《クダン》の予言



 それは後に《オルクス》に伝えられ、彼らの占いは真実の卜(うらべ)と呼ばれるようになる。



「主だけが死に、従者である我々だけがみっともなく生き残ってしまった...情けない限りです」



「...クダンは私たちと違い、戦を好まないクリスタリアの意向に従って闘う事をしてこなかった...だから仕方のない事でしょう?」



 ルミアの優しい声かけに、ローグは少しだけ微笑む。



「...貴方がた《オルクス》のように、死してもなお主を守るぐらいの意地とそれに相応しい力を持っていれば良かったと、主を失って気づいた...私たちは大馬鹿者です
 だからこそ...もう二度と後悔はしたくないのです、ルミア様」



 すくりと立ち上がり、ルミアに向かってローグは跪く。