『いいか。今話した事は限りなく現実に近い未来だと思え』



 ジンノから突きつけられた話は信じがたいものだった。



 かつてフェルダン王家に仕えたという伝説の占星術師による予言。



 しかもその内容は他でもない



 愛する者の『死』



 つまり



 ルミアの『死』だと。



『この国はただでさえ牢獄のような場所だ。王都から出るための術を持つ者達には俺から根回しをしてある。先にルミアの心も折って来た。滅多なことがない限り抗うようなことはないだろうが、もし万が一無理にでも出ようとしたらお前らが全力で止めろ。それだけでいい』



『...分かった、それは当然全うする。だがルミアにあそこまでする必要はあったのか?』



 淡々と指示を出すジンノに対し、イーリスたちは冷静ではいられなかった。



 ジンノがルミアに何をしたかを知っていたから。



 絶大な信頼を置いていた兄からの突然の裏切りに、ルミアの心が傷つかないわけがない。



 立ち直れなくなるかもしれない。



 それほど、彼女自身にとってジンノと言う男の存在は大きかった。



『...ルミアは正真正銘の騎士だ。例え身内に対して甘くても、敵と認識した相手に対しては容赦なく戦えるし、主と認めた相手の為なら喜んでその体を盾にできる
 フェルダンで起こる事件に、あの男が絡んでいることは明白で、おまけに命の危機にあると分かればどんなことをしてでも駆けつける。俺がいくら声を大にして止めに入っても聞く耳も持たないに決まってる
 だから突き放した。俺の後を追って来れなくなるぐらい』



 あいつは馬鹿じゃない。



『俺のとった行動の意図ぐらい...分かるはずだ』