驚きに固まり目を見開く私の目の前で血の滲む指を課長が口の中に含み血を舌で舐め取る。

私の顔から視線を逸らさず妖艶な表情を見せる中村課長。

チュパッと音をさせて指に吸い付く様が何とも言えずエロティックだから困る。

自分の身に起こっている事とは到底思えず、現実味が全くない。

「俺は大園さんの言葉を信じるよ。

愛人になるような人がこれくらいの事で全身を真っ赤にして恥ずかしそうにする筈がないからね」

嬉しそうにそう言った中村課長はやっと私の指を解放してくれたと思ったのに今度は体全体を優しく包み込まれた。

「大園さんはとても真面目で単に不器用なだけだろ?

本人も噂を知ってるのに全く否定しないから余計に人の興味を引いたんじゃないか?」

中村課長に言われるまでそんな事は考えた事も無かった。

「私が何を言っても信じない人は信じない。

そうとしか思い付きませんでした……だから否定するだけ無駄かなって」

不思議と中村課長には思っている事が素直に言えた。

「そうかも知れないけど……少なくとも俺は君の言葉を信じたよ。

願わくば……それを実践で確認させてくれたらなら喜びもひとしおだけどね」

そう言ってウインクする中村課長。

「私、会社で事に及ぶつもりは絶対にありませんから……」

「じゃあ俺のマンションだったら構わないの?」

完全に否定しない私に悦に入ってそう言った課長は傲慢ヒーローのように腹黒だ。