「マジか?ひそかが俺に全く関心が無かった事が判明したな……

俺も中村秘(ひそか)だよ。

漢字は違うけど名前が同じなのがひそかを見つめる切っ掛けだったのになぁー」

ガックリと肩を落とした秘さんでも何かを思いついたのか、企むような顔をしてこう言った。

「俺とひそかが結婚したら二人とも”なかむら ひそか”だね。

まぁーそれは書類上のことでこれから俺はひそかの事”マイハニー”って呼ぶよ」

とびっきりの笑顔から繰り出される甘い言葉はロマンス小説のヒーロー並の極甘だ。

私は今日からこのリアルな恋人に日々翻弄される事になるのかな?

全く予測が付かなくてかなり心配……

でも”余りにも何も変化の起こらない日常”とはさよならできたかも知れない。

でも時々は活力源となるロマンス小説を注入するのは忘れずにいよう。

「さあーマイハニー帰るよ」

「はい、ひそかさん」

大きな手を差し出す秘さんに素直に自分の手をゆだねる。

尋常ではない胸の高鳴りに慣れる日もきっと来るはずだ……

まだ微かなこの思いが恋なのかも分からない私だけど、この人が私の大切な人になる予感だけはしっかり感じている。

誰にも邪魔されたくないからこの関係は”秘密”です。



(おわり)