夜、夢の世界に浮遊していた俺は、何かの物音で目を覚ました。

 ――って俺、いつの間にか寝てたのか。

 目を擦りながら枕元の時計を確認すると、深夜二時。

 道理で真っ暗なわけだ。

「ふぃっ……しゅくっ!」

 誤解しないでほしい。
 今のはただのくしゃみである。

 俺は再び布団を被った。





「――きゃっ!」

「!?」

 俺は無意識に体を起こした。

 今、確かに「きゃっ!」という叫びが聞こえた。
 菜々未の声だった。

 こんな深夜に、まだ起きているのか?
 そういえば、先程の物音は何だったんだ?
 今の小さな悲鳴は――?

 俺の脳が、危険信号を知らせる。

 もしかして、菜々未に何か――いや、まさかな。
 やっぱり見て来た方が――いや、きっと何でもないよな。

 そんな考えを巡らせているうちに、見てくれば早いことだと気が付いた。


 少しの迷いと緊張と不安を胸に、俺は部屋を出た。

 菜々未の部屋の前まで来て、ドアに耳をくっつけると、微かに声が聞こえてきた。


「――でも?」

 よく聞こえないな。

「……ん」

「じゃあ………や紅子ちゃん」

「……に?」

「うん…………」

「……ったわ、じゃあね」


 何だ…………?