彗に促された悠が椅子に座る。


「これ、食べればいいだけ? 本当に?」


悠はまだ半信半疑のようで、眉間にシワを寄せている。


確かに悠の気持ちはよくわかる。


開かないドアといい、嵐を攻撃した機械といい、謎の声といい、この建物はどう考えても普通ではない。


鍵を開ける手段としてはあまりにも簡単すぎる。


でも、声の主がそう言ったんだから、これで鍵は開くハズだった。


「とにかく、食べてみないとわからない」


俺は素直にそう言った。


「……わかったよ」


悠は渋々頷き、スプーンを手にした。


蛍光灯に照らされたスプーンの曲線がキラキラと光る。